「映像」と「動画」の違いは?
インターネット上で見られる映像を「動画」と呼ぶことがにわかに定着しつつある。
一見似たような言葉であっても、実際には意味が違うことは、ままある。
例えば、ものづくりで言う「作家」(=陶芸家)と「職人」(=陶工)はおなじモノを作る人間だが、意味が違う。「作家」は1点モノの作品をつくる人のことで、職人は受注に応じて100個、1000個と同じモノをつくる人のことだ。
例にたがわず、「映像」と「動画」も、似た言葉だが同義語ではないのではないか?
その定義を考察したいと思う。
英語など外来語から考察する
■動画・映像にあたる言葉を上げる。
・movie(映画)
・motion picture(映画)
・cinema(映画)
・film(映画)
・video(映像・動画)
→いくつか言葉をあげた。ここから分かることは、「video」意外は映画を指すということ。
videoは一般的に、フィルムではなく電気信号を用いて媒体に記録したものを指す。
しかし、今日では映画も電気信号で記録されている。ということは、本来的な言葉の使い方とは異なっているということだろうか。
この関係性から考えられることは、映画というのは「映像」・「動画」は大きなカテゴリであり、その中に映画がある、ということだろう。
■対になる言葉
次に、対になる言葉を比較する。
・movie(動画) : audio(音声)
・picture(画像) :motion picture(動画)
・photograph(写真) :cinematograph(映画)
・photographer(写真家):videographer(映像作家)
→視覚的な「動画」と聴覚的な「音声」が対になっているものと 、
動きの有無が遂になっているものに大別できる。
イラストとアニメの関係は「picture(画像) :motion picture(動画) 」で表す事ができるだろう。
そして、実写に置き換えた場合は、「photographer(写真家):videographer(映像作家)」。先程の「video」は「photo」の対になる。映像はちなみに「audiographer」という言葉はなさそうだ。
上記からわかったことは2つ。
①「動画」と「映像」は「電気信号を用いて記録されていて、なおかつ動いているもの」
②比較すると静止画と対になるものが多い
③しかし「映像」「動画」を指す「video」はaudio(音)と対になっている
これは難問だ。
IT業界から考察する
では、別の切り口から見ていきたい。
昨今、ウェブメディア界隈では「動画2.0」という概念が流行っている。そのオピニオンは、ONE MEDIA の明石ガクトさん。
すごく大雑把に言うと、かれは視聴態度やデバイスで「映像」と「動画」を定義している。
彼によると、「映像」は能動的に観る「映画」や「テレビ番組」といったコンテンツ。
「動画」はFacebookのフィードに突然現れたり、CMとして不意に出る、意図せず目にするコンテンツ。つまり受動的なもの。
「観る」と「見る」の違いと考えると整理がしやすいかもしれない。
どうやら色々な線の引き方があるようである。。
さて、結論を最後に申し上げるのは不本意なのだが、さっぱり定義ができなかった。でも、明日のために言葉を定義しようという試みはずっとしていきたいなと思っています。いつか、映像作家と対になる言葉で「動画作家」という言葉が親しまれるようになるかもしれない。あるいは陶芸の例にならうならば「動画職人」が生まれるかもしれない。
その時に、どんなものを作りたいのか想像し続けなくてはならないなと毎晩悩んでいます。