おいしい生活をささえる「小石原焼」
「ほぼ日」で有名なコピーライター・糸井重里さん。
彼が仕事の中に「おいしい生活」というウディ・アレンの映画のタイトルであり、キャッチコピーがある。
おいしい生活 ―デジタル・レストア・バージョン― [DVD]
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2011/06/24
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詳しく説明はしないが、とにかく「おいしい」と「生活」をセットにするととても良い響きということだ。
というわけで、僕の家における「おいしい生活」について紹介したい。
料理は皿に盛り付けるべきである
料理研究家・長尾智子さんにお話を伺ったことがある。
彼女は食卓について、ある提言を僕にしてくれた。
「私はもっと食卓を楽しむべきだと思っている。それは、何も手のこんだ料理をすることだけでなくて、たとえばコンビニで買ったお弁当も、皿に盛るだけで見た目も綺麗になって、食事が楽しくなる。もっと楽しく食卓をすることを考えるようになると、料理にも興味が湧いてくるし、食事が豊かになる」
だいたいこんな話だ。それまで100円くらいのお皿を使っていた僕は、大いに影響を受けた。皿に盛り付けるだけで、「おいしい生活」をおくることができるのだ。
福岡の伝統工芸品・小石原焼
ちょうど引っ越しをし、奥さんと同棲を始めた頃だったということもあり、話を聞いてから2ヶ月であまりでとてもたくさんの皿やお椀を購入した。
奥さんの故郷・福岡の伝統工芸品・小石原焼だ。
福岡県と大分県の境目にある、東峰村という小さな小さな村。ここに50件の窯元が立ち並び、1点1点器を作り続けている。
小石原焼の特徴は、素朴な模様。お皿は代替絵の具みたいなもので模様が描かれていて、それが絵だったり線だったりするわけだが、小石原焼は、土と釉薬で模様をつける。その装飾技法が素朴で、料理を引き立ててくれるようで、すごく豊かな食卓になる。
装飾技法「飛びかんな」
器を成形した後に、「かんな」という道具でひっかいて、不思議な模様。この装飾技法を「飛びかんな」という、
その技術は「コツさえつかめば中学生でもできる」そうで、元々は手間をかけずにカッコいい装飾ができないか? と考案されたという。小石原のすぐ隣にある小鹿田の窯元でもほぼ同じ技法で「飛びかんな」の器が作られている。
都内では、 渋谷ヒカリエにある「D&DEPARTMENT」 や、セレクトショップ「BEAMS」でも取り扱われており、センスの良い方々にも人気がある。
職人さんたちは、手作業にもかかわらず、全く同じような模様の器を数百枚数千枚と毎月焼き上げる。しかし機械を使わずに作り出すことで、自然の影響をちょっとだけ受け、それが「個性」になる。
土の乾き具合や焼き加減でほんの僅かな模様や形の違いが生まれるのだ。
すごく大事なことは、職人さんたちは、全く同じ仕事をしている。正確無比で寸分の狂いもない。その丁寧な仕事と自然の力が掛け合わさるからこそ、器が素朴で風土を感じさせるものになる。
そんな器に料理を盛り付ければ、食材が生まれた風土と調和し、心が豊かになるのは素直な心の動きではなかろうか。
僕は、丁寧な手仕事を生活に取り入れることで、「おいしい生活」を手に入れた。